
高校生等奨学給付金 — 就学支援金と違う制度で、2026年度から対象が広がった
高校(通信制を含む)に通っていて、世帯の年収の目安が490万円未満なら、奨学給付金の対象です。年収が分からない場合は、親(保護者)に確認するか、担任に聞いてみてください。2026年度(令和8年度)から対象が広がり、住民税非課税世帯に加え年収約490万円未満の世帯まで受け取れるようになりました。
高校生等奨学給付金は授業料以外の教育費に効く返還不要の給付金で、就学支援金(授業料に効く制度)とは別の制度です。申請も別々に必要です。
「就学支援金が2026年度から全員対象になったなら、奨学給付金も全員もらえるのか」と思っているなら、そこだけ確認してください。奨学給付金には独自の所得要件があり、年収490万円以上の世帯は2026年度も対象外のままです。
この記事でわかること
- 就学支援金と奨学給付金の違い(何に効くか・誰が対象か)
- 2026年度からの対象世帯の変更内容と、年収の目安
- 通信制高校(私立)の年額支給額と、3年間の合計
- N高等学校ネットコース普通科を例にした「就学支援金で引かれない費用と奨学給付金の額の並び」
- 申請先と申請時期の注意点
- 退学・転学を検討している人は「在学中に学校をやめた場合」の節へ
数字は文部科学省の公式リーフレット(令和8年度版・2026年6月16日更新)と、N高等学校の公式ページに掲載されているものだけを使っています。計算の前提は毎回明記します。
就学支援金と奨学給付金、何が違うか
就学支援金の話を調べてきた場合は特に、対象費目と所得要件が別物であることを最初に押さえておくと、後の計算がわかりやすくなります。
| 就学支援金 | 高校生等奨学給付金 | |
|---|---|---|
| 効く費目 | 授業料のみ | 授業料以外の教育費(教科書費・教材費・学用品費・通学用品費・通信費など) |
| 対象世帯(2026年度〜) | 全世帯(所得制限撤廃) | 年収約490万円未満の世帯 |
| 返還 | 不要 | 不要 |
| 申請先 | 学校 | 都道府県または学校 |
| 申請の要否 | 別途申請が必要 | 就学支援金とは別々に申請が必要 |
(出典: 文部科学省「高校生等奨学給付金」リーフレット令和8年度版・文科省就学支援金案内ページ・確認日: 2026-09-02)
就学支援金と奨学給付金は、効く場所が授業料か授業料以外かで分かれており、制度の目的が重なりません。対象世帯の範囲も別の基準で決まっています。
2026年度から広がった対象世帯
文部科学省のリーフレット(令和8年度版)によると、令和8年度から奨学給付金の対象世帯が次のように変わりました。
| 対象世帯 | 年収の目安(※) | 2026年度の状況 |
|---|---|---|
| 生活保護世帯 | — | 従来から対象 |
| 住民税非課税世帯(生活保護以外) | 270万円未満 | 従来から対象 |
| 年収270万円以上380万円未満の世帯 | 270〜380万円 | 令和8年度から新設 |
| 年収380万円以上490万円未満の世帯 | 380〜490万円 | 令和8年度から新設 |
※ 年収の目安の前提(リーフレット注記より): 両親のうちどちらか一方が働き、高校生1人(16歳以上)・中学生1人の4人世帯の目安。
この年収の目安は住民税の課税額から逆算した参考値です。実際の判定は道府県民税所得割額と市町村民税所得割額の合算額(住民税のうち所得に応じた部分の合計)で行われます。同じ年収でも家族構成や控除の内容で判定結果が変わるため、「目安より年収が少し多いから対象外」と自分で判断せず、都道府県または学校に確認することを勧めます。
年収490万円以上の世帯は対象外のままです。2026年度の拡充は年収490万円未満までで、それ以上の世帯への拡充はリーフレットに記載がありません。
「就学支援金が全員対象」と「奨学給付金も全員対象」は別の話
2026年度から就学支援金の所得制限が撤廃され、すべての世帯が授業料支援を受けられるようになりました。この変更は授業料に効く就学支援金の話です。

奨学給付金は授業料以外の費目に効く別の制度で、独自の所得要件を持っています。2026年度の拡充後も、年収490万円以上の世帯は奨学給付金の対象外です。
就学支援金の申請を済ませても、奨学給付金は自動的に支給されません。リーフレットに「授業料支援の高等学校就学支援金とは別々に申し込みが必要です」と明記されています。両方を受け取るには、それぞれ個別に申請してください。
通信制高校(私立)の支給額
文部科学省のリーフレット(令和8年度版・2ページ目)に掲載されている私立通信制高校の支給額(年額)は次のとおりです。
| 世帯区分 | 私立通信制(年額) |
|---|---|
| 生活保護世帯 | 52,600円 |
| 住民税非課税世帯(生活保護以外) | 52,100円 |
| 年収270〜380万円未満(拡充区分) | 17,370円 |
| 年収380〜490万円未満(拡充区分) | 13,030円 |
参考として、同じ世帯区分での私立全日制の支給額は非課税世帯で152,000円、年収270〜380万円未満で50,670円、年収380〜490万円未満で38,000円です。通信制の給付額は全日制の3分の1前後にとどまっています。
3年間で受け取れる合計
3年間在学した場合の奨学給付金の合計は次のとおりです(前提: 3年間を通じて同じ世帯区分であること)。
| 世帯区分 | 年額 | 3年間合計 |
|---|---|---|
| 住民税非課税世帯(生活保護以外) | 52,100円 | 156,300円 |
| 年収270〜380万円未満 | 17,370円 | 52,110円 |
| 年収380〜490万円未満 | 13,030円 | 39,090円 |
世帯の収入状況が変わると適用区分も変わる可能性があります。3年間同じ区分であるかどうかは、毎年の申請時に確認が必要です。
N高等学校の費用と並べると
N高等学校の入学を検討している場合や、就学支援金で補えない費用がいくら残るかを数字で確認したい場合は、この節の計算を参照してください。
就学支援金で引かれない費用と奨学給付金の額の関係を確認するため、N高等学校(ネットコース・普通科)を例に並べます。
前提: N高等学校ネットコース普通科・就学支援金あり(先引き)・新入生(転入学者は先引きの対象外)。奨学給付金は私立通信制の国基準額。都道府県の独自上乗せは含まない。
N高等学校(ネットコース・普通科)の公式ページによると、就学支援金が適用されない費目は次のとおりです。
| 費目 | 年額 | 就学支援金の適用 |
|---|---|---|
| 施設設備費 | 50,000円 | 対象外 |
| 教育関連諸費 | 13,000円 | 対象外 |
| 年額合計 | 63,000円 | — |
| 入学金(初年度のみ) | 10,000円 | 対象外 |
就学支援金は授業料のみに適用されるため、施設設備費と教育関連諸費は先引きを使った場合でも毎年かかります。入学金は初年度のみです。N高等学校の公式ページが示す「先引きありの3年間合計自己負担199,000円」はこの3つの費目で構成されます(入学金10,000 + 施設設備費50,000×3年 + 教育関連諸費13,000×3年 = 199,000円)。
奨学給付金の年額・3年間合計と、N高のこの費用を並べます。
| 世帯区分 | 奨学給付金年額 | 奨学給付金3年間合計 | N高・支援金対象外費用3年間 | 差額(3年間) |
|---|---|---|---|---|
| 非課税世帯(生活保護以外) | 52,100円 | 156,300円 | 199,000円 | −42,700円 |
| 年収270〜380万円未満 | 17,370円 | 52,110円 | 199,000円 | −146,890円 |
| 年収380〜490万円未満 | 13,030円 | 39,090円 | 199,000円 | −159,910円 |
差額のマイナスは「奨学給付金を受け取っても補いきれない部分」を示しています。
重要な留保: 奨学給付金の対象費目はリーフレットで「教科書費・教材費・学用品費・通学用品費・教科外活動費・生徒会費・PTA会費・入学学用品費・修学旅行費・通信費等」と示されています。N高の「施設設備費」「教育関連諸費」がこの費目と同じ定義かどうか、文科省の公式リーフレットに明示はありません(後述の【未確認】U-4参照)。また、奨学給付金は定額の給付金で、費目ごとに充当先を指定する義務はリーフレットに書かれていません。「施設設備費に充当できる」とは断定できないため、この表は「支援金で補えない費用と奨学給付金の額を並べたもの」として参照してください。
奨学給付金が使える世帯・対象外の世帯
使える世帯
- 生活保護世帯(受給状態で判定。年収目安によらない)
- 年収の目安が490万円未満(前述の4人世帯の前提)
- 国公立または私立の通信制高校に在学または入学予定
- 授業料以外の費用(教科書代・教材費・学用品費など)が家計の負担になっている
年収270万円未満(住民税非課税)の世帯なら、私立通信制で52,100円/年という最も高い区分が当てはまります。就学支援金と組み合わせると、授業料(就学支援金が担当)と授業料以外の費用(奨学給付金が担当)の両方に支援が届きます。
対象外になる世帯
- 年収の目安が490万円以上(所得要件を満たさない)
年収490万円を超える世帯は2026年度も対象外です。所得の判定は年収ではなく道府県民税所得割額と市町村民税所得割額の合算額(住民税のうち所得に応じた部分の合計)で行われます。同じ年収でも家族構成や控除の内容で結果が変わるため、「おそらく対象外だろう」と自己判断せず、都道府県の担当窓口で確認することを勧めます。
就学支援金・都道府県独自補助金との使い分け
就学支援金との使い分け
就学支援金と奨学給付金はどちらか一方を選ぶものではなく、対象に当てはまれば両方に申請できます。効く費目が授業料(就学支援金)と授業料以外(奨学給付金)に分かれているため、制度が重なりません。
就学支援金については「通信制高校、3年間でいくらかかるのか」で3年間の計算を確認できます。サポート校を選んだ場合に就学支援金がどこまで効くかは「サポート校の学費に就学支援金は効かない」で扱っています。
都道府県独自の補助金との違い
都道府県が独自に設けている補助金は、国の高校生等奨学給付金とは別の制度です(例: 長野県「通信制高校サポート校等就学支援事業補助金」・神奈川県「学費補助金」)。申請先・対象費目・支給条件がそれぞれ異なり、国の奨学給付金と同時に一括申請はできません。
国の奨学給付金の対象外(年収490万円以上)でも、都道府県独自補助の対象になることがあります。条件は都道府県ごとに異なるため、担当窓口に確認してください。
都道府県が国の奨学給付金に上乗せ支給を実施しているかどうかは【未確認】です(後述U-3参照)。
申請の方法と注意点
申請先は「お住まいの都道府県または学校」です(リーフレット原文)。
文科省リーフレットには「申請手続きや手続きの開始時期については、都道府県ごとに異なります」と明記されています。都道府県によって書類の種類・申請の窓口・振込時期が違います。
新入生向けには「4〜6月に一部早期支給の申請ができる」という記載があります(リーフレット原文)。すでに在学中の場合も申請の機会がある時期は都道府県によって異なるため、学校または都道府県の担当窓口に確認してください。
就学支援金とは別々に申し込む必要があります。どちらの手続きが先でも構いませんが、一方を済ませても他方は自動的に申請されません。
在学中に学校をやめた場合(退学・転学)の扱い
退学または転学した場合に、受け取り済みの奨学給付金を返還する必要があるかどうか、文科省リーフレットに記載がありません。【未確認】です(後述U-5参照)。
退学や転学を検討している場合は、手続きを進める前に都道府県または在籍校に奨学給付金の扱いを確認することを勧めます。
通信制高校の授業料や入学金が退学時に戻るかどうかは、別の制度の話です。「通信制高校をやめたら学費は戻るか」で扱っています。
まとめ
高校生等奨学給付金は授業料以外の教育費に対する返還不要の給付金で、就学支援金と組み合わせて受け取れます。申請は別々に必要です。
2026年度(令和8年度)から対象が年収約490万円未満まで広がりましたが、年収490万円以上は対象外のままです。就学支援金が全員対象になったことと、奨学給付金が全員対象になったことは別の話です。
私立通信制高校の支給額(国の基準)は年額52,100円(住民税非課税世帯)から13,030円(年収380〜490万円未満)です。3年間の合計は非課税世帯で156,300円、年収380〜490万円未満の世帯で39,090円になります。
N高等学校ネットコース普通科を例にすると、就学支援金で補えない費用(施設設備費・教育関連諸費・入学金)の3年間合計は199,000円です。奨学給付金の3年間合計と並べると、非課税世帯でも42,700円の差が残ります。奨学給付金の対象費目とN高の費目名称が同じ定義かどうかは公式に確認できないため、「充当できる」とは断定できません。参考の数字として使ってください。
申請は都道府県または学校を通じて行います。手続きの時期・書類・都道府県の上乗せの有無は自治体によって異なるため、在学先の学校または都道府県の担当窓口に確認してください。
学校・自治体に聞くこと
奨学給付金を申請する前に、学校または都道府県の担当窓口に確認するとよいことをまとめます。
学校に確認すること
- 奨学給付金の申請書類の提出先と提出期限
- 就学支援金の申請と奨学給付金の申請を同じ窓口でまとめて行えるか
- 退学・転学した場合に奨学給付金の返還義務があるか
- 本人から担任に確認できること: 奨学給付金の申請書類の配布があるか、もしくは保護者に連絡が届くか
都道府県の担当窓口に確認すること
- 自分の世帯が対象区分のどれに当てはまるか(住民税の課税額が基準。年収の目安は参考値)
- 都道府県独自の上乗せ支給があるか
- 申請書類・申請期間・振込時期
裏が取れていない事項(未確認一覧)
記事中の数字は文部科学省のリーフレット(令和8年度版)とN高等学校の公式ページから直接確認したものだけを使っています。以下の項目は確認できておらず、記事本文には数値を書いていません。
申し込む前に確認をすすめる項目
- U-3: 都道府県が国の奨学給付金に独自の上乗せ支給を実施しているか(リーフレットに記載なし。「詳しくはお住まいの都道府県または学校にお問い合わせください」のみ)
- U-4: 奨学給付金の「授業料以外の教育費」がN高の「施設設備費」「教育関連諸費」と同じ定義かどうか(文科省リーフレットの対象費目は「教科書費・教材費・学用品費・通学用品費・教科外活動費・生徒会費・PTA会費・入学学用品費・修学旅行費・通信費等」と示されているが、「施設設備費」「教育関連諸費」という名称での明示がない)
- U-5: 退学・転学した場合に受け取り済みの奨学給付金の返還義務があるか(文科省リーフレットに記載なし)
補足の未確認項目
- U-1: 令和7年度(2025年度)以前の支給額と対象世帯の具体的な数字(令和8年度リーフレットに変更前の数字が掲載されていないため。記事では「従来から対象」「令和8年度から新設」という区分のみを書いた)
- U-2: テーマ案にあった「年収590万円未満」という数字の出典(文科省の公式リーフレット・案内ページのいずれにも記載がなかった。奨学給付金の説明では拡充後の上限は「年収約490万円未満」。「590万円」は旧就学支援金の所得区分目安と混同した可能性があるが確認できていないため、記事では使っていない)